糖尿病
糖尿病は、インスリンが十分に働かないために、血液中のブドウ糖という血糖が増えてしまう病気です。
2型糖尿病の場合、ある日突然血糖値が高くなるわけではなく、ほとんどの場合、ゆっくりと経年的に血糖値が高くなり糖尿病に至ります。
次のうち、どれか1つでも満たした方は糖尿病の疑いです。
空腹時血糖値(10時間以上絶食後の空腹時の血糖値)126mg/dL以上
HbA1c6.5%以上
ブドウ糖は、体にとって重要なエネルギー源ですが、糖尿病になると体内に十分なインスリンが分泌されなかったり、インスリンがうまく作用しなかったりして、血糖値がコントロールできなくなります。血糖値が慢性的に高い状態が続くと、血管が傷つき、将来的に心臓病や失明、腎不全、下肢切断といった重篤な合併症を引き起こします。
また、血糖値があまりにも高い場合は昏睡を引き起こすこともあるため「血糖値が高め」であることを指摘された場合、きちんと治療を行う必要があります。
糖尿病の原因
糖尿病の原因は、遺伝的な要因と生活習慣の要因が複雑に絡み合って起こると考えられています。
- 遺伝的な要因: 糖尿病のリスクを高める遺伝子が存在します。
- 生活習慣の要因: 肥満、運動不足、不規則な生活、過食や偏った食生活、ストレスなどが糖尿病の発症リスクを高めます。
糖尿病は一度発症すると残念ながら完全に治ることはありません。
糖尿病の種類
糖尿病には、主に以下の2種類があります。
- 1型糖尿病: 自己免疫疾患によって、インスリンを産生する膵臓のβ細胞が破壊されてしまう病気です。インスリン注射による治療が必要です。以前は「インスリン依存型糖尿病」とも呼ばれていました。
糖尿病の方のうち1型糖尿病の割合は10%未満です。若年の方の場合は、1型糖尿病のことが多いですが、年齢に関係なく発症します。
1型糖尿病の原因は正確にはわかっていませんが、①体質②何らかの原因でインスリンを作っている膵臓の一部が破壊されることが要因ではないかとされています。 - 2型糖尿病: 2型糖尿病の場合、膵臓はインスリンを作り出しますが、量が不十分だったり、作られたインスリンが十分に作用しません。
2型糖尿病は最も一般的な糖尿病で糖尿病の方の90%以上が2型糖尿病です。若年で発症する場合もありますが、ほとんどは40歳を過ぎてから発症します。2型糖尿病の原因ははっきりせず、遺伝体質や食生活の乱れ、肥満、ストレスなど様々な要因が重なって発症します。 加齢に伴ってインスリン分泌機能が低下するため、成人で発症することがほとんどですが近年では若年化しています。
2型糖尿病の症状
生活習慣病は症状がまったくないまま進行していくことが多いのですが、糖尿病の場合もまさにそうで、初期の段階では、自覚症状がまったくないことが多いので、健康診断等で指摘されて気づく方が多いです。病気が進行するにつれ下記のような症状が出現します。
- 喉の渇き・水をよく飲む
- 尿の回数が増える・頻尿
- 体重減少
- 倦怠感
- 手足のしびれ
- かすみ目
- 皮膚の乾燥・かゆみ
- 皮膚の傷が治りづらい
- (男性の場合)勃起不全
これらの症状がある場合は、早めに医療機関を受診することが大切です。
糖尿病の合併症
糖尿病が長期間放置されると、以下のような合併症を引き起こすリスクが高くなります。
- 糖尿病網膜症: 糖尿病のために失明する人は毎年3,000人以上います。成人後の失明原因のトップとも言われています。
糖尿病網膜症は、自覚症状があらわれずに進行し、気づいた時には失明寸前ということがよくあります。定期的な眼科受診も必要です。 - 糖尿病腎症: 高血糖により、糖尿病腎症が起こると透析療法が必要になります。現在国内では毎年新たに3万人以上の人が透析療法を開始していますが、そのうち約4割が糖尿病腎症によるもので透析が必要になる原因のトップです。
早期腎症⇒顕性腎症前期⇒顕性腎症後期⇒腎不全と進行していきます。 - 糖尿病神経症: 糖尿病神経障害は高血糖によって神経が障害されることで起こります。特に苦痛が大きいのは手足のしびれ・痛みです。また、ひどい下痢や便秘など全身に症状が及びます。
- 糖尿病性大動脈疾患: 脳卒中や心筋梗塞などのリスクが高くなります。
- 糖尿病足壊疽: 足の血流が悪くなり、潰瘍や壊疽を引き起こす可能性があります。
そのほかにも、免疫力低下により感染症にかかりやすくなったり、高血圧・脂質異常症・骨粗しょう症・歯周病などの合併も高率にみられます。
症状がほとんどないままに進行するため、「サイレント・キラー」とも呼ばれている糖尿病ですが、命を脅かす病気でもあるため、健康診断や血液検査で指摘を受けた場合には、早期の医療機関受診が必要です。
糖尿病と診断されたらまず取り組むべきこと
1. 医療機関受診
健康診断や人間ドックでC判定(要再検査)やD判定(要精密検査)の方は、必ず内科外来を受診し再検査・精密検査を受けるなど医師の指示に従いましょう。当院には糖尿病治療の経験豊富な医師が在籍しております。
早期に医療の介入をおこなうことで、重い合併症を患わずに済む可能性があります。
2. 食生活の改善
食事の量や摂り方に気を付け、膵臓の負担を軽くすることが必要です。摂取カロリー、バランスの良い食事、一日三食を規則的に摂取するということを意識しましょう。
3. 適度な運動
運動をすることで血液中のブドウ糖が使われて血糖値が下がります。 また、食後の運動は血糖値の上昇を抑える効果があります。 運動により脂肪が減ることで体内のインスリンの働きも良くなります。
1日30分程度の有酸素運動を継続しておこなうようにしましょう。 ウォーキングや自転車、水泳など無理なく生活に取り入れるようにしましょう。 ただし、病状によっては運動が逆効果になることもあるため、医師の指示に従いましょう。
そのほかにも禁煙・節酒・ストレスをためないなどといった日々の生活での対策も重要です。
糖尿病の治療法
糖尿病の治療法は、病型や症状、年齢、生活習慣などによって異なります。
糖尿病の方は、基本的には月に1度の来院、月に1度の血糖およびHbA1cの測定、約3~4ヶ月に1回の採血によるフォローをおすすめします。
- 1型糖尿病: インスリン注射による治療が必要です。
- 2型糖尿病: 生活習慣の改善が基本です。具体的には、食事療法、運動療法、禁煙などが重要です。
- 薬物療法: 生活習慣の改善だけでは血糖値をコントロールできない場合は、薬物療法が必要になります。
薬物療法においては、生活習慣によって様々な原因と様々な薬があります。当院では経験豊富な医師と管理栄養士が連携を取りながら、栄養指導も行い生活習慣の改善をサポートしたうえで、多くの種類の中からその人の状態に合わせた薬を処方し、ライフスタイルに合わせた治療を進めます。
糖尿病のよくある質問
Q糖尿病は完治しますか?
A糖尿病は完治する病気ではありませんが、適切な治療と生活習慣の改善によって、血糖値をコントロールし、合併症の発症・進展を予防することができます。
Q 糖尿病になったら、インスリン注射が必要ですか?
Aまずは検査をして患者様の状態を把握した上で医師が判断いたします。生活習慣の改善や服薬だけでは十分な血糖コントロールが難しいと考えられる場合には、インスリン注射が必要となります。
Q糖尿病にならないために、普段の生活でどのようなことに注意すればよいですか?
A
1. 食生活を見直す
- 適切なカロリー摂取: 肥満は糖尿病の発症リスクを高めるため、適切なカロリー摂取を心がけましょう。
- 栄養バランスの良い食事: 野菜、果物、魚、大豆製品などを積極的に摂取し、糖質、飽和脂肪酸、コレステロールの摂取を控えましょう。
- 規則正しい食事: 朝食を抜いたり、夜遅くに食べたりするなど、不規則な食生活は避けましょう。
2. 適度な運動をする
1日30分程度の有酸素運動を継続しておこなうようにしましょう。
日常生活の中で体を動かす: エレベーターではなく階段を使う、自転車に乗るなど、日常生活の中で体を動かす機会を増やしましょう。
3. 適正体重を維持する
- BMI: 肥満は糖尿病の発症リスクを高めるため、BMIを22以下に維持しましょう。
- 体脂肪率: 男性は20%以下、女性は30%以下を目標にしましょう。
- 減量: ダイエットが必要な場合は、医師や栄養士に相談しながら、無理のない方法で行いましょう。ダイエットがうまくいかないという方は、当院ではメディカルダイエット(自費)のおくすりのご用意がございます。ご興味がある方はこちらで詳細を御覧ください。
4. 禁煙する
喫煙は糖尿病の発症リスクを高めるだけでなく、合併症のリスクも高めます。
禁煙は容易ではありませんが、禁煙外来などを活用しながら、禁煙を目指しましょう。当院でも禁煙外来を行っております。
5. 十分な睡眠をとる
睡眠不足は糖尿病の発症リスクを高めます。
- 1日7~8時間の睡眠: 毎日、質の高い睡眠をとるようにしましょう。睡眠時無呼吸症候群を指摘されている方は治療をおこないましょう。「いびき」を指摘されている方は睡眠時無呼吸症候群かもしれません。当院でも検査ができます。
- 睡眠習慣の改善: 寝る前のスマホやパソコンの使用は控え、規則正しい睡眠習慣を心がけましょう。
その他
- 定期的な健診を受ける: 糖尿病のリスクが高い方は、定期的に健診を受け、血糖値などをチェックしましょう。
- ストレスを溜めない: ストレスは血糖値を上昇させるため、適度な運動や趣味などを通して、ストレスを解消しましょう。
Q定期的にどのような検査を受ける必要がありますか?
A糖尿病の方は、基本的には月に1度の来院、月に1度の血糖およびHbA1cの測定、約半年に1回の採血によるフォローをおすすめします。